毎月レポート

18.12.01

 10年で生産量4割増。「ツナ」を超えた、「サバ缶」ブーム。

 きっかけは、2013年に放送された、あるテレビ番組でした。そこで、「サバを食べると美容・ダイエット効果がある」と紹介されるや、女性を中心に「サバ」が大ブレイク。その後もメディアに頻繁に取り上げられて人気に拍車、一気にブームとなりました。おかげで「サバ缶」は飛ぶように売れ、多くのスーパーで品薄状態に。もともと“メンズ缶”と呼ばれるほど男性からの人気が高かったサバ缶も、これを機に女性という新たな顧客層を獲得したのです。

 

 その動きに呼応して、水産大手をはじめとするメーカー各社は、20~30代女性の需要喚起を狙い、目新しい味やオシャレなパッケージのサバ缶を続々と発売。

 

 “お元気ですか?”という意味のフランス語“サヴァ”を商品名にした「サヴァ缶」(岩手県産/税込380円前後)も登場。オシャレサバ缶の先駆けといわれる商品で、“オリーブオイル漬け”“レモンバジル味”“パプリカチリソース味”の3種類。書店や雑貨店でも販売されており、ギフトとしても好評です。

 

 異色のサバ缶として話題となったのが、「No.38(ナンバー・サーティーエイト)」(アバランチ)という、1缶1200円(税別)の高級缶。缶詰とは無縁の、大阪の広告制作会社が設立20周年の記念品として作ったところ、予想外の大反響で商品化。3種の味のラインアップで、高額ながら人気を博しています。

 

 八戸の水産加工品会社[マルヌシ]から今春発売されたのは、脂の乗りが抜群の“八戸前沖さば”を使った「八戸サバ缶バー」。味は、“ゆずこしょう”“アヒージョ”など6種類(各、税込410円)で、18年度青森県特産品コンクールの最高賞(知事賞)を受賞しました。

 

 サバ缶は、2016年に、生産量で長年首位の座に君臨していたツナ缶を追い越すと、翌17年、今度は売上高でも初めてツナ缶を抜いてトップに躍り出るという快挙を記録。

 

 この勢いは、サバを観光の起爆剤に、と地域経済をけん引するまでに発展。「全日本さば連合会」が開催する「鯖サミット」(2014年から)や全国のサバを楽しむ「鯖ナイト」など、サバ食文化の普及に取り組む各地方で数々の“サバイベント”が催され、盛り上がりを見せています。

 

 かつて産地では、値も安く価値のない魚として冷遇されがちだった、サバ。しかし、そのありがたみの薄い、あまりに当たり前すぎる魚が、今や“スーパーフード”に大化けし、メーカーに“缶詰界のエース”とまで持ち上げられるまでに出世しました。空前のサバ缶ブームは、女性層という心強い援軍を得て、ますます脂が乗ってくることでしょう。

 


【参考】
公益社団法人 日本缶詰びん詰レトルト食品協会 http://www.jca-can.or.jp/

岩手県産 https://www.iwatekensan.co.jp/

アバランチ http://www.avalanche.co.jp/

マルヌシ http://www.marunushi.co.jp/

全日本さば連合会 http://all38.com/

朝日新聞(2018年6月27日付)




“価格”は一定に非ず。変動型料金「ダイナミック・プライシング」、浸透中。

 ネットを通じてモノの価格を容易に比較できるようになったことで、大量供給・大量消費時代の申し子である“一物一価”はもろくも崩れ去り、価格の多様化を招いています。供給側にとって、ますます適正な値付けが難しくなっているいま、救いの手ともいうべき一つの画期的な手法がもたらされました。それは、需要と供給に基づいて価格をリアルタイムで上下させる「ダイナミック・プライシング」(以下、DP)という価格決定の方法です。

 

 例えば、ホテルの場合、これまでは担当者が毎日、ネットなどで競合するホテルの料金をチェックして宿泊料金を決めていました。この、大変な割りには曖昧な、人の手による“値付け”作業を、AI(人工知能)に任せようというのがDPです。膨大なビッグデータを数値化してAIが分析。自動的に、しかも瞬時に、顧客満足と企業利益が最大化する、双方にとっての最適な価格をはじき出します。

 

 DPを取り入れているのはホテルや航空会社だけではありません。とりわけ強い関心を示しているのが、スポーツやエンターテインメント業界です。人気薄の時には値引きして集客を増やし、人気の場合は高値で販売する------米国のプロスポーツ界ではすでに当たり前のDPですが、その波がようやく日本でも本格化しそうです。

 

 2016年に[ヤフー]と[福岡ソフトバンクホークス]は、ホームゲームで開催される試合のチケットの一部にDPを導入。曜日、天候、開始時刻、ホークスの順位、相手チームの調子、登板予定の投手、当日のチケットの売れ行き、過去にその席が5万席の中で何番目に購入されたか、などといったビッグデータを基に100円単位で上下させながら当日のチケットの値付けが行われました。

 

 2017年には[東北楽天ゴールデンイーグルス]が、18年春にはJリーグの[セレッソ大阪]が、ホーム主催ゲームでの8試合・14席限定ながらJリーグで初めてDPを導入。同じくJリーグの[横浜F・マリノス]は、今年7月から、ホームゲームでの一部観客席にDPを導入しました。このサービスを提供しているのが、6月に設立された[ダイナミックプラス]という、[三井物産][ヤフー][ぴあ]の3社共同で立ち上げたDP事業専門の合弁会社です。

 

 ほかにも、[横浜DeNAベイスターズ]が今年度から導入を開始。[ローソン]も次世代店舗でのDP導入を検討。国交省とタクシーの[日本交通グループ]も今秋から、時間帯によって迎車料金を変動するDPの実証実験を始めています。

 

元来、モノやサービスにどれだけの価値を感じるかは、買い手のその時々の情況によって異なるもの。時代とともに、“定価”は見る見る力を失い、価格は“変わって当たり前”になろうとしています。

 

DPによる新たなビジネスモデルが増殖することで、“AI値付け”された“時価”が、さらに力を誇示することになりそうです。

 


【参考】
ダイナミックプラス http://www.dynamic-plus.com/

三井物産 https://www.mitsui.com/

ヤフー https://about.yahoo.co.jp/

ぴあ http://corporate.pia.jp/

ローソン http://www.lawson.co.jp/

国土交通省 https://www.mlit.go.jp/

日本交通グループ http://www.nihon-kotsu.co.jp/



近ごろのサラリーマン御用達。コスパの“ちょい飲み”、「立ち飲み居酒屋」。

 外食市場全体が縮小傾向に陥るなか、特に居酒屋業界は衰退の一途。好調なのは比較的新しい激安居酒屋チェーンくらいで、団体客相手の、強制的に“お通し”が出されるような古いスタイルの総合居酒屋チェーンは、軒並み苦戦を強いられています。

 

 そんな、体力の弱った居酒屋業界をさらに脅かす存在が出現しました。“ちょい飲み”ブームの台頭です。駅前や繁華街には「立ち飲み居酒屋」が急増。安くて、旨くて、男女を問わず気軽に入れるカジュアルな雰囲気。サクッと飲んで、サクッと帰る、長居無用の“ちょい飲み”スタイルが、節約志向や残業削減でコスパを気にして飲まざるを得ない現代サラリーマンの切実なニーズにマッチしたといえます。

 

 アツアツのたこ焼きをつまみに、キンキンに冷えたハイボールが楽しめる立ち飲みスタイルの店「築地銀だこハイボール酒場」が、[サントリー]と[築地銀だこ](ホットランド)のコラボで実現。首都圏を中心に展開中です。

 

 驚愕の安さで話題となっているのが「立呑み 晩杯屋(ばんぱいや)」(トリドールHD)。煮込み130円、げそ焼き150円などで、最も高くて、極厚ハムカツ300円。安いのに旨いと人気です。

 

 ドラム缶をテーブル代わりにした立ち飲み屋は、その名も「ドラム缶」(ドラムカンパニー)。チューハイ150円、つまみの9割以上が300円以下で、“2杯飲んで、1品食べて、500円”が売り。内装工事費はほぼ0円、家賃の安い2階以上に出店するなど、徹底したコスト節約でこれほどの低価格メニューを実現。

 

 小資本による個人経営的色合いの濃かった“ちょい飲み”市場でしたが、ここにきて、大手外食チェーンも続々と参入。市場は、新旧・大小入り乱れて、またたく間に大きく膨らんでいきました。

 

 “ちょい飲み”の先駆者として市場を開拓したのが、熱烈中華食堂「日高屋」。ラーメン+餃子+ビールでも1000円でお釣りがくると評判になり、増収増益が続きます。牛丼[吉野家]の黒字化に貢献したといわれる「吉呑み」や、[すき家]の「呑みすき」、[なか卯]の「呑み卯」などをはじめ、立ち食いそば[富士そば]の「ふじ酒場」、[リンガーハット]の「ちゃんぽん酒場」、コンビニ[ミニストップ]の「cisca(シスカ)」、博多ラーメンの「一風堂スタンド」などなど。また、コーヒーチェーンやファストフード、ファミレス各店もアルコールメニューを拡充して“ちょい飲み”需要に対応。新たな収益源として大きな期待が寄せられています。

 

 “1人~3人程度で”“滞在時間1時間以内”“飲んでつまんで1000円以内”がキーワードの“ちょい飲み”。男女とも単身者が増えているという昨今のご時世あらば、今後いっそう、この市場の拡大余地があろうかというものです。

 


【参考】
一般社団法人 日本フードサービス協会 http://www.jfnet.or.jp/

サントリー http://www.suntory.co.jp/

築地銀だこ https://www.gindaco.com/

トリドールホールディングス http://www.toridoll.com/

ドラムカンパニー https://drum-company.net/

ハイデイ日高 http://hidakaya.hiday.co.jp/

吉野家 http://www.yoshinoya.com/

すき家 https://www.sukiya.jp/

なか卯 https://www.nakau.co.jp/

富士そば https://fujisoba.co.jp/

リンガーハット http://www.ringerhut.jp/

ミニストップ http://www.ministop.co.jp/

力の源ホールディングス(一風堂) http://www.chikaranomoto.com/

朝日新聞(2018年7月4日付)




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