毎月レポート

18.9.01

 “不足”のはずが“過剰”に。ホテル開業ラッシュに立ち込める、暗雲?

 訪日外国人(インバウンド)は昨年、約2800万人に達し、政府は東京五輪の20年には4000万人規模の拡大を予想しています。2年ほど前、押し寄せるインバウンドの宿泊需要にホテルが追い付かない、五輪開催時には“宿泊難民”が現れる----そんな危機感に襲われたホテル業界が、一斉に新設・改装に動きだしました。

 国内の大手ホテルチェーンをはじめ、外資系の日本進出や不動産・デベロッパー、鉄道などが相次いで参画。特に、野村、三井、三菱、東急といった不動産大手はインバウンドの取り込みを狙い、こぞってホテル事業を強化。

 さらに、異業種からの参入も多く見られます。カジュアル衣料大手の[ストライプインターナショナル](岡山)は、和をテーマにしたインテリアの店舗併設型ホテルを東京・渋谷にオープン。同様に、婚礼大手の[テイクアンドギヴ・ニーズ]も渋谷に、キャンプ用品の[スノーピーク]が横須賀に、それぞれ宿泊施設を開業。[良品計画]も来春を目途に銀座にホテルを開く予定です。

 ビジネスホテル組も負けてはいません。[アパグループ]は、20年までに47の新設を計画、[東横イン]は25、[共立メンテナンス](ホテル「ドーミーイン」)は31の新設をそれぞれ目指します。

 

 そんな開業努力の成果もあってか、2020年には主要都市のホテル客室数が16年比で3割近くも増えるとの見通しが立ちました。ところがここにきて、当初のホテル不足の懸念が一転。客室不足は起きないとの試算が発表され、いまや“供給過剰”とさえ囁かれているのが現状です。加えて、このホテル余り現象に追い討ちをかけるのが、民泊や高級カプセルホテル、クルーズ船(船内泊)といったライバル陣の増加です。特に民泊は、6月に施行された「住宅宿泊事業法」(民泊新法)によってルールが明確になり、さらに市場の拡大に弾みがつくことが予想されます。コンビニ各社をはじめ、[楽天][JTB][京王電鉄][パナソニック][リクルート]なども早々に民泊事業に進出。

 

 客室の確保を巡って、“不足不安”から一転“余剰不安”へ。客の取り合いはもちろん、不足するホテルスタッフの奪い合いが激しくなることは容易に想像されると同時に、市場的には、供給過剰に伴う価格競争の激化が最も注目されることになりそうです。


【参考】
ストライプインターナショナル http://www.stripe-intl.com/
テイクアンドギヴ・ニーズ https://www.tgn.co.jp/
スノーピーク https://www.snowpeak.co.jp/
良品計画 https://ryohin-keikaku.jp/
アパグループ https://www.apa.co.jp/
東横イン http://www.toyoko-inn.co.jp/
共立メンテナンス https://www.kyoritsugroup.co.jp/
朝日新聞(2018年2月3日付/同5月22日付)
日経МJ(2018年4月6日付)




“うまい、もう一杯!”飲み味進化して、「青汁」人気上昇中。

 青汁=マズイ、というイメージが広まったのは、1990年代に放映されていた某バラエティー番組の罰ゲームで使われてからです。さらに同時期に流された九州のメーカー[キューサイ]のテレビCM、「う~ん、マズイ!もう一杯!」の強烈なフレーズが青汁の“マズさ”を全国に知らしめることになり、ありがたくないイメージが定着してしまったようです。

 

 青汁は、アブラナ科の野菜である「ケール」を主原料として開発されました。“緑黄色野菜の王様”と呼ばれるほど栄養価はずば抜けて高いのですが、“えぐみ”と青臭さが強いため、日本では食材として食する習慣はありませんでした。特に当時の青汁は、ケールの搾り汁をそのまま冷凍したもので、独特の青臭さがダイレクトに鼻にきて、飲みにくいのも当然でした。

 しかし、それも昔の話。マズさの要因だったケールの代わりに、最近は「大麦若葉」や「明日葉」「桑の葉」などが主原料として急浮上。中でも大麦若葉は、栄養価の高さはケールに負けず劣らずの高評価のうえ、クセのないさっぱりした味わいが好評です。

 と言っても、ケールが入っているすべての青汁がマズイというわけではありません。あくまで、ケール100%のピュアな青汁が飲みにくいということ。現在は、粉末タイプが主流で、水だけでなく、牛乳や豆乳、フルーツジュースなどで割ったり、ヨーグルトにトッピングしたりデザート感覚で楽しめます。

 

 青汁を、主力の「お~いお茶」を超える新たな柱にと意気込んでいるのは[伊藤園]。「ごくごく飲める毎日1杯の青汁」と「毎日1杯の青汁 無糖」(ともにPET)を今春発売。

 [アサヒグループ食品]は、若い女性をターゲットに48種の植物発酵エキスを配合したすっきりした甘さの「フルーツ酵素青汁」(粉末)を今春発売。

 [日清食品]も今年、青汁市場に参入。次世代スーパーフードとして注目されている“モリンガ”の青葉を使用した「奇跡のモリンガ青汁」(粉末)を発売。

 “親子で飲める青汁”をコンセプトに、鉄分を配合した「子供と一緒においしい!フルーツ青汁」(粉末)を発売したのは[永谷園]。

 青汁の老舗[キューサイ]は、山田養蜂場のハチミツを使った「はちみつ青汁」(粉末)が好評です。

 

 若い世代でも生活習慣病が問題視されるようになってきた昨今。CMにも若いモデルを起用するなどして、高齢者だけの飲み物というイメージを払拭。今後、青汁未経験者をいかに取り込んでいくか。10年連続で拡大を続け、野菜ジュースの牙城に迫ろうかという勢いの青汁市場から目が離せません。

【参考】
キューサイ https://www.kyusai.co.jp/
伊藤園 https://www.itoen.co.jp/
アサヒグループ食品 https://www.asahi-gf.co.jp/
日清食品 https://www.nissin.com/
永谷園 http://www.nagatanien.co.jp/
朝日新聞(2018年3月6日付)



泊まって味わう「古民家」の活用。地域も潤って、“一泊二鳥”。

 「古民家」を再生し、地域の新たな観光資源として有効活用しようとするビジネスが、全国あちらこちらで本格化しています。

 「古民家」とは、1950年以前に建てられた築50年以上の木造住宅のこと(全国古民家再生協会)。総務省の「住宅・土地統計調査」(5年ごとに実施)によると、2013年時点での古民家の数は全国で約157万戸。10年前(2008年)の調査で約180万戸あった古民家が、5年間のうちに約23万戸減少したことになります。増えているかと思いきや、逆に減っているのです。これは、古民家の多くが、空き家となって解体を余儀なくされたからです。古民家の再生事業が、自治体にとっては空き家対策という側面も担っているといえます。

 

 こうした背景の中、インバウンド需要も視野に入れた古民家再生の動きが、今年に入ってにわかに活気づいています。

 楽天グループの[楽天ライフルステイ]は、民泊仲介大手の[米ホームアウェイ]、[全国古民家再生協会]と協力して、全国に点在する古民家を改装して民泊施設に転用するサービスを開始しました。今年度に、まず30棟の開発を目指します。

 千葉県佐原では、築160年の古民家を改修した宿泊施設「佐原商家町ホテル」が開業。京葉銀行、佐原信用金庫など、官民6者の連携で設立した町おこし会社[ニッポニアサワラ]が事業を束ねます。4棟でスタート、来春までに8棟に増やす計画。

 茨城県桜川市は、[常陽銀行]や民泊仲介・運営の[百戦錬磨](宮城)、[凸版印刷]と連携協定を結び、同市の古民家を民泊に活用して地域の振興につなげます。

 千葉県の[小湊鉄道]は、地元の古民家宿泊施設運営会社[人と古民家]と組み、ゴルフと古民家宿泊がセットのレジャープランを打ち出しました。

 古民家が生まれ変わるのは、宿泊施設だけではありません。

 築80年の古民家が食堂に(宮城)、築100年の古民家がレストランに(京都)、築140年の古民家がカフェに(長崎)、築130年の古民家がシェアオフィスに(福井)……古民家の再生事例は枚挙にいとまがありません。

 政府は2016年、20年までに200地域で古民家などを活用した町づくりの整備計画を発表しました。また、地方銀行も地元の経済活性化のため一役買っており、昨秋時点で、古民家再生事業への取り組みは27行、34事例に上っています(全国地方銀行協会)。

 

 日本を訪れる外国人観光客は、いまや、東京、大阪、京都といった“ゴールデンルート”に飽き足らず、日本ならではの田舎の景観や何でもない日常的な暮らしなど、“体験型”にシフト。古民家や町家など、歴史的な建造物に泊まることに憧れを抱く人が増えており、まさに、古民家ビジネスにとって格好の追い風状態といえます。

【参考】
一般社団法人 全国古民家再生協会 http://www.g-cpc.org/
総務省 http://www.soumu.go.jp/
楽天ライフルステイ https://www.rakuten-lifull-stay.co.jp/
佐原商家町ホテル https://www.nipponia-sawara.jp/
小湊鉄道 http://www.kominato.co.jp/
一般社団法人 全国地方銀行協会 http://www.chiginkyo.or.jp/
日経МJ(2018年4月23日付/同6月6日付)




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