毎月レポート

18.5.01

高品質で輸出拡大、高価格で国内需要縮小。「和牛」が抱える“悩み”とは。

 キメ細かい霜降りの“サシ”から溶け出すバターのようなコク、柔らかくふんわりとした食感、甘みのある香り……“肉のキャビア”とも称され、質、価格とも世界で最高の牛肉と評価されている「和牛」。

 2000年に口蹄疫(2010年にも発生)、2001年にBSE(牛海綿状脳症)が発生して以降、各国は日本からの牛肉輸入を禁止。その間に、豪州や米国では和牛の血を引いた「WAGYU」が生産され、“本家”和牛の半額程度ということもあって、世界の高級牛肉市場を席捲してしまいました。

 現在、BSEはすでに過去の病気となり、徐々に市場も回復。相次いで輸入が解禁されていますが、いまだ未解禁の中国と韓国は協議中の段階です。(2017年7月時点)

 日本から海外への牛肉輸出量は、ここ数年で2ケタ増が続いており、2017年には前年比4割増と過去最高を記録しました(財務省)。輸出国の筆頭格は香港、次いでカンボジア、米国、シンガポール、EUと続きます。政府は、中央畜産会と連携して、“和牛マーク”を制定し(2007年)、オールジャパンで輸出促進を後押ししています。

 一方、好調な輸出に対し、国内の畜産農家の弱体化が大きな懸案事項として横たわります。高齢化や後継者不足などによって繁殖ノウハウを持つ農家の数が10年前と比べ、4割も減少。子牛が慢性的に不足し、価格も過去最高の値を付けるという事態に。この影響は、当然、国内の価格にも波及し、平均卸値で5年前に比べて4割ほど高騰。ますます庶民の手に届きにくくなり、国内市場の縮小を招いてしまいました。高品質を武器に海外でもてはやされる一方で、足元の国内では高値のために消費が低迷するという皮肉。

食肉各社は、国内需要の減少を補うべく、攻めの輸出拡大策を急ぎます。

 [伊藤ハム]は、輸出相手国が認定する食肉処理施設を増やし、輸出量を2019年に17年比の1.5倍に伸ばす計画。卸大手の[スターゼン]は、シンガポールの食肉加工会社と共同で販路を開拓、輸出を20年に17年実績の2倍にする計画。[日本ハム]は、米国など11の国・地域に拠点を設け、売り込み強化を図ります。

 欧米で和牛といえば「WAGYU」のことを指すほど一般的に普及しており、強力なライバルとして和牛の前に立ちはだかります。そこそこの肉質で価格が半分ほどのWAGYU市場に攻め入るのは、容易ではなさそうです。

【参考】
農林水産省 http://www.maff.go.jp/
財務省 http://www.mof.go.jp/
公益社団法人 中央畜産会 http://jlia.lin.gr.jp/
JA全農ミートフーズ http://www.jazmf.co.jp/
伊藤ハム http://www.itoham.co.jp/
スターゼン https://www.starzen.co.jp/
日本ハム https://www.nipponham.co.jp/
日経産業新聞 (2017年9月21日付/2018年1月19日付)
日本経済新聞 (2017年7月29日付/2018年2月10日付)




あの関西人も食べだした! なぜ、いま、「納豆」人気?

 納豆の売れ行きが絶好調です。これまで、2004年をピークに減り続け、11年の東日本大震災時に市場が急激に落ち込んだものの、12年以降、内食回帰や腸活・菌活ブームなどの追い風もあって需要が回復。消費量は右肩上がりで伸長し、16年の市場規模は前年比16%増(2140億円)と過去最高を更新しました(全国納豆協同組合連合会)。

 たしかに納豆が、栄養価の高い発酵食品であることは広く知られています。さらに、安価で価格が安定していることも、節約志向や高齢者の単身世帯に歓迎される食品であることの大きな要因といえます。

 しかし、納豆消費拡大の理由はそれだけではなさそうです。

 食の安心・安全を求める消費者に響いたのが、“国産大豆使用”という国産志向へのアピールでした。2015年頃からメーカー各社は、国産大豆を謳った新商品を相次いで投入。店頭では大豆の産地や品種銘柄をパッケージで強調するのがトレンドとなり、この高価格帯商品の販売増が、今日の成長の一因ともいえます。

 もう一つの市場拡大要因は、“納豆不毛の地”といわれていた関西、特に大阪での消費の伸びが著しいという点です。2016年、大阪在住の人が納豆に使った金額は12年比で5割近くも増え、その伸び率は東京や名古屋を上回っています(総務省)。背景としては、昔からの苦手要因であるニオイを抑えた商品開発とタレを関西風のダシに替えるといった地道な努力・戦略が実を結んだことが挙げられます。

 [ミツカン]は、ニオイ控えめの「なっとういち」や「金のつぶ におわなっとう」。さらに、「金のつぶ 関西だし仕上げ」などを関西での人気商品に育てました。

 「おかめ納豆」の[タカノフーズ]からは、カツオなどをベースにした“ご当地仕様”のタレ付きで西日本限定商品を展開。

 2016年には、大阪に「納豆BAR小金庵」という納豆専門店がオープン。ちょっと贅沢な高級納豆をはじめ、“納豆バター”や“納豆ドレッシング”などの変わり種商品を揃えて話題となっています。

 2016年に1世帯当たりの年間納豆消費額が最も高かったのは、水戸市で5563円、次いで盛岡市、福島市、前橋市、青森市と続きます。西日本で最も高いのは熊本市(4306円)で15位、最下位は和歌山市の1766円でした(総務省)。納豆の需要が、いかに東高西低の傾向が強いかがわかります。

 米国の健康専門誌『ヘルス』が発表した世界の5大健康食品の中には、韓国のキムチ、インドのレンズ豆、ギリシャのヨーグルト、スペインのオリーブ油と並んで、堂々、日本の納豆が選ばれています。

【参考】
総務省  http://www.soumu.go.jp/
全国納豆協同組合連合会  http://www.natto.or.jp/
ミツカン http://www.mizkan.co.jp/
タカノフーズ http://www.takanofoods.co.jp/
納豆BAR小金庵 http://710-bar.co.jp/
日経МJ (2017年12月18日付)


介護“する側・される側”の負担を軽減。ニーズは高まる一方の「在宅介護食」。

 7年後の2025年には、65歳以上の人口が全体の3割に達し、団塊世代の全てが75歳以上となる超高齢化社会を迎える日本。医療費・介護費の圧縮などを目的に、一層、在宅介護への移行が推進されてきている、いま。老老介護や独居高齢者の増加に伴う切実な課題は、在宅介護で最も大きな割合を占めるといわれる“食事”の問題です。

 介護食は手作りが理想です。しかし、毎日3食用意するのは大変です。食べやすく調理法を工夫したり、形態や栄養面の調整をしたりといった特別な手間と気配りが求められます。さらに、厚労省の調べでは、在宅介護を受ける高齢者の6割以上が低栄養状態の傾向があるといいます。

 そこでいま、年々、需要を伸ばしているのが、在宅向けの介護食です。介護する側には、調理に費やす肉体的負担の軽減。される側には、食欲減退になりがちな食事への精神的負担の軽減。双方にとってのメリットが、市場をじわじわと拡大させています。「日本介護食品協議会」では、介護食品全般を「ユニバーサルデザインフード(UDF)」という名称に統一し、硬さや粘度の程度によって、“容易に噛める”“歯ぐきでつぶせる”“舌でつぶせる”“噛まなくてよい”の4つに分類。市販の介護食のパッケージには、UDFマークと4区分の明記が義務付けられています。

 高齢者の“食べる喜び”を基本に、早くから介護食の開発に取り組んでいるのが[キューピー]。今春、「やさしい献立」シリーズ(55種類)に、「やわらかおじや 牛丼風」「やわらかおかず かつ煮味」「とろけるデザート みかんゼリー」などが加わりました。[アサヒグループ食品]は今春、介護食分野に、この3年間で110億円の大型投資をすると発表。昨年立ち上げたブランド「バランス献立」シリーズの売り上げを、2020年までに17年比3.5倍規模に育てると打ち出しました。[マルハニチロ]の「もっとエネルギー」シリーズは、機能性を売りに他社との差別化を図ります。従来品の1.5倍のエネルギー量を目安に中鎖脂肪酸油を配合。「肉じゃが」「パワーライス」「ちゃんぽん」など多彩なメニューがラインアップ。ストローで飲むユニークな介護食として人気の高いのが、[明治]の「メイバランス」シリーズ。少量でもバランスよく栄養素が摂取できる手軽さがうけています。

 拡大が確実視されている介護食市場。食品メーカーや外食チェーンなど、様々なプレーヤーが参入してシェア争奪戦が繰り広げられていますが、そこには、高齢者の健康の維持に加え、食事の楽しみの提供というメンタルな部分も併せ持つ社会的意義の大きい市場であることを忘れてはいけません。与えるだけの“食べ物”ではなく、美味しそうで食べたいと思ってもらえる“食事”こそが、真の“介護食”なのですから。

【参考】
厚生労働省  http://www.mhlw.go.jp/
日本介護食品協議会 http://www.udf.jp/
キューピー https://www.kewpie.co.jp/
アサヒグループ食品 http://www.asahi-gf.co.jp/
マルハニチロ http://www.medicare.maruha-nichiro.co.jp/
明治 http://www.meiji.co.jp/
日経産業新聞(2017年11月6日付)
日本経済新聞(2018年2月22日付)




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