毎月レポート

18.2.01

ビジネスとしての、「公立図書館」民間経営の行方。

 “官から民への行政改革”の掛け声、さらにはひっ迫した地方財政の台所事情改善の意味もあって、これまで行政や自治体が行ってきたサービスについて民間委託の導入が活発になっています。

 1館あたりの運営費が年間1億円以上にもなるといわれる公立図書館とて例外ではなく、運営の合理化、経費・職員の削減、サービスの質の向上などを狙った民営化の動きが加速しています。図書館など、公共施設の管理・運営を民間企業やNPO、公益財団に代行させる「指定管理者制度」が2003年に制定され、現在、全国約3200館のうち2割近い650館でこの制度を導入しています。

 民間運営で最も“有名な”図書館が、マスコミにも大々的に取り上げられ一躍脚光を浴びることとなった、佐賀県の「武雄(たけお)市図書館」です。レンタル店「TSUTAYA」を展開する[カルチュア・コンビニエンス・クラブ]を指定管理者として2013年にリニューアルオープン。特徴は、従来の図書館像にしばられず、書店(蔦屋書店)とカフェ(スターバックス)を一体化させた点。年中無休、朝9時から夜9時まで開館。天井近くまでの書架やゆとりある空間づくり、音響など、自治体では考えつかないようなアイデアが散りばめられています。5万人の町に、初年度は92万人が来館し、経済効果は20億円。地方創生の画期的手法と、高く評価されました。

 指定管理者サイドからみると、いくら運営努力しても委託管理料という収入の大黒柱が増えるわけではないため、できるだけコストを抑えて利益を確保しようとします。まして図書館のように、利用者から料金を徴収できない施設の運営においては、その傾向が顕著です。そのため、「武雄市図書館」のように、併設した店舗の営業で収入を得るといった形態の出現は必然で、今後の民間運営の前提になるのかもしれません。
 この、通称“ツタヤ図書館”は、2年後の15年、偏った選書や蔵書の分類法などをめぐって再び注目を集めることとなりましたが、賛否併せて問題提起されたという意味では、公立図書館民営化の在り方を考えるうえで縮図的なモデルケースといえます。

 積極的に民営化へと踏み込んでうまく機能している自治体が存在する一方で、図書館にオシャレは必要ない、公共施設としての本分を忘れてる、といった反対の声が根強いのも事実。また、下関市、魚沼市、小郡市などのように、一旦は民間委託に踏み切ったものの、その後、再び自治体“直営”に戻した例も少なくありません。

 民間が運営すること自体が問題なのではありません。丸投げするのではなく、どこまでを、どのように民営化するのか-----これは委託する自治体側の課題です。
 近い将来には、主従が逆転して、民間企業が民業収益のみで公立図書館を運営する日が訪れるかもしれません。


【参考】
カルチュア・コンビニエンス・クラブ http://www.ccc.co.jp/
日本図書館協会 http://www.jla.or.jp/
朝日新聞(2017年8月5日付)



リスクがチャンスに。市民権を得て太り続ける「ぽっちゃり服」市場。

 これまで、大きなサイズの婦人服売り場では、サイズ優先で、色もデザインも二の次。とりあえずカラダが入るものを選ぶしかありませんでした。明らかに大きなサイズを求める女性が多く存在し、需要があるにもかかわらず、商品が十分に供給されてこなかったという現実。大手アパレル各社は、この状況をわかっていつつも、ニッチな市場だからと放置。生産コストや在庫管理の非効率などを理由に、ほとんど“見て見ぬふり”状態を通してきましが、昨今の“ぽちゃカワ服”市場の盛り上がりに目が覚め、各社、本腰を入れ始めたようです。

 ぽっちゃり服ブームの先駆けであるアパレル通販大手の[ニッセン]は、昨春、新たに、ぽっちゃり女子をターゲットに絞った通販モール「アリノマ」を開設しました。
 [伊勢丹新宿店]の大きいサイズの売り場「クローバーショップ」(13号~19号)や「クローバープラスショップ」(21号~25号)での売り上げも順調。
 [ワコール]は、2013年から「ぽちゃカワブラ」シリーズ(アンダーバスト85~100cm)を立ち上げて、この市場に本格参戦。

 欧州のファッション業界では、痩せすぎたモデルと契約しない、あるいはファッションショーへの出演を禁止する法律ができるほど。
 店頭のマネキンの世界にも“ぽちゃカワ”の波が押し寄せています。大手メーカーの[七彩(ななさい)]からは昨春、丸みを帯びたフォルムでリアルなぽっちゃりマネキンが登場しました。
 2014年には、ぽちゃカワのカリスマ、渡辺直美さんプロデュースのぽっちゃり服ブランド「プニュズ」がデビューしています。

 これらの市場に共通するのは、一度買うとそのまま顧客になるケースがほとんどだという点。取り扱っている店が少ないため、自然とリピーターとなって固定客につながるといいます。市場規模こそ小さいですが、一度つかめば大きいマーケットといえます。

 とはいえ、ぽっちゃりさんたちが、ここにきて急激に増えたというわけではないはずです。人数が増えたから“ぽっちゃり市場”が拡大しているのではなく、ずっと眠っていた潜在需要が様々な方向から掘り起こされたということです。

 細くなくてもいいじゃない、と思わせてくれる昨今のぽっちゃりさんブーム。これまで置いてきぼりにされていた分、市場的にはまだまだ伸びしろはあるようです。


【参考】
ニッセン  http://www.nissen.co.jp/
伊勢丹  http://isetan.mistore.jp/
ワコール http://www.wacoal.jp/
七彩 http://www.nanasai.co.jp/
日経MJ(2017年8月11日付)
朝日新聞(2017年9月12日付) 


スマホの次はこれ! 音声操作家電の本命、「AIスピーカー」。

 1リットルの牛乳パックほどの大きさで、形は円筒形。それに話しかけるだけで、内蔵されている人工知能(AI)がその内容を認識して、会話したり、音楽を聴かせてくれたり、家電の操作や天気・ニュースなどの生活情報を伝えてくれるIT端末が、いま話題の「AIスピーカー」(「スマートスピーカー」とも呼ばれる)です。市場的には、スマホの次の大型商品と見られ、世界規模で注目度が高まっている大成長株です。

 この市場は、2014年に、世界初のAIスピーカー「Echo(エコー)」を発売した[アマゾン]が切り開きました。そのヒットぶりを見たITの巨人たちは、次々とAIスピーカーに参入。2年後の2016年に[グーグル]が「Google Home(グーグルホーム)」を、翌17年に[マイクロソフト]が「Invoke(インボーク)」を開発・発売しました([アップル]の「HomePod(ホームポッド)」は2018年発売予定)。

 米国より3年は遅れをとっているといわれる日本市場に昨秋、本国の2強が満を持して上陸を果たしました。
 最初にやって来たのは、「Google Home」でした。高度な音声認識能力と本業でもある優れた検索能力が売り(1万5120円/税込)。

 次いで、本命と目される「Echo」が上陸。スマホのアプリに匹敵する“スキル”の数が圧倒的に多く、本家のネット通販とのスムーズな連動が強みです(1万1980円/税込)。

 迎え撃つ国産勢は、2017年秋に、通信アプリ大手の[LINE]が手掛ける「Clova WAVE(クローバウェーブ)」を発売(1万4000円/税込)。最大の武器は、国内で約7000万人の利用者を抱える対話アプリ「LINE」との連動です。

 AIスピーカーには、それぞれの製品ごとに“AIアシスタント”と呼ばれるAIの“頭脳”が搭載されています。例えば「Echo」なら、アシスタント名が「アレクサ」なので、「アレクサ! ○○を注文して」という具合いに話しかけます。AIスピーカーの肝(きも)となる部分であり、それが製品の個性=セールスポイントとなります。現在、AIスピーカーに参入している[パナソニック][ソニー][東芝][オンキョー]といった日本の家電メーカー製の場合、出足が遅れたうえに、アシスタントにはグーグルやアマゾン製のものを採用。各社とも、スピーカーとしてのハイクオリティーを売りとしていますが、これは、核となるAIアシスタントが自前でないための苦肉の策ともとれます。

 家電がIoT対応しているという前提条件となるものの、近い将来、AIスピーカーが家全体のリモコンのような存在になると思われます。市場的には、米国のみならず、すでに中国や韓国勢も攻勢をかけてきており、世界を舞台にした戦国時代の様相に。そんな中、国産勢はどれだけ太刀打ちできるか、期待を込めつつ、今後の動向に注目です。


【参考】
アマゾン  https://www.amazon.co.jp/
グーグル https://www.google.co.jp/
日本マイクロソフト  https://www.microsoft.com/
アップル https://www.apple.com/
LINE https://clova.line.me/
日経産業新聞(2017年9月14日付/同10月6日付) 
日経MJ(2017年9月15日付/同10月4日付/10月6日付/同10月30日付)



ページの先頭へ