毎月レポート

17.09.01

虫もいないし雨でも安心。“本格”より“気分”の、「屋内アウトドア」人気。

 自然は満喫したいけど、日頃の快適な生活スタイルから離れるのは嫌、というムシがいい人たちが増えているのでしょうか、“気分だけキャンプ”の「屋内アウトドア」施設が急増し、日本中に広まっています。

 2年前、東京・浅草にオープンした日本初の屋内型キャンプスタイル宿泊施設「ジャポニカロッジ」。10人ほどが泊まれる小さな“キャンプ場”(室内)には、一人用テントが6張りの他、山小屋風ロフトベッドもあります。シャワー、トイレ、貴重品ロッカー、Wi-Fi完備で一泊2500円から。

 屋内アウトドアのゴージャス版として、2年ほど前から専用施設が増えるなど話題となっているのが「グランピング(グラマラス×キャンピング)」。自然に囲まれたロケーションの中、リゾートホテル並みの宿泊設備で快適に過ごす贅沢なキャンプの総称で、手ぶらで参加できるのが魅力です。
 そのグランピングに、“スパ”と“カフェ”を掛け合わせた複合型温浴施設も出現しました。昨年オープンした「おふろカフェ ビバーク」(埼玉県熊谷)で、館内には、大型テントやハンモックが点在し、焚火も楽しめて、さながらキャンプ場。レストラン、サウナ、1万冊のコミックや雑誌・書籍、マッサージの他、ボルダリングウォールまで備わっており、一日中飽きさせない空間となっています。館内着とタオルがついて、入館料は大人1380円(小人690円)。

 屋内アウトドアをコンセプトとする流れは、業種を超え、様々にカタチを変えながら増殖しています。
 東京・新宿[ルミネエスト]の屋上には、15トンもの白い砂を敷き詰めてビーチを再現した、「東京スカイリゾートワイルドビーチ新宿」が今年4月にオープン。カフェ、バーベキュー、グランピングと3つのコンテンツを提供しています。
 また最近、グランピングの高級イメージを敬遠する若者たちの間では、気軽にグランピングの世界観を楽しむ「おしゃピク(おしゃれなピクニック)」やベランダでちょっとしたアウトドア気分を楽しむ「ベランピング(ベランダ×グランピング)」も人気です。

 屋内アウトドアが流行する要素の一つに、“SNS映え”する点が挙げられます。手軽なリゾート体験として、ついアップしたくなる“インスタジェニック”な魅力が散りばめられているところも見逃せません。

 “本格”より“気分”-----躊躇させていた本格アウトドアへの不安要素を完璧にカバーしてくれるこのブームは、まだまだ始まったばかりです。今後も、普段アウトドアに縁遠い人を、どんな仕掛けで振り向かせるか。そこには、訪日外国人を含めた大きな商機が待ちかまえていそうです。


【参考】
一般社団法人 日本ホームパーティー協会 http://hpaj.org/
ジャポニカロッジ https://www.japonica-lodge.com/
おふろカフェ ビバーク http://ofurocafe-bivouac.com/
東京スカイリゾートワイルドビーチ新宿 http://wildbeach.jp/shinjuku/
日経MJ(2017年5月31日付) 



いかに乗り越えるか。限界を迎えた「宅配」の危機。

 このままではサービス維持が難しい!という、悲鳴にも似た現場の声が日増しに大きくなり、“宅配危機”が深刻さを増しています。
 その要因の一つが、ネット通販の急速な普及で、2010年に約7.8兆円だったEC(電子商取引)市場が2015年には約13.8兆円にまで拡大(経産省)。それに比例して取り扱い個数も激増。15年度には37億個を突破、この5年間で5億個近くも増え(国交省)、いずれ60億個まで増え続けるだろうとみられています。その背景には、宅配会社と[アマゾン]や[楽天]などに代表されるネット通販業者との運賃契約が横たわります。大口顧客の運賃が大幅な値引きを前提に設定されているため、取り扱い数が増えても宅配会社側に利益が上がりにくい構造となっているのです。2013年にアマゾンとの契約を打ち切った[佐川急便]に続き、最大手の[ヤマト運輸]は今年10月から小口の一般顧客対象に27年ぶりの値上げを打ち出しました。しかしヤマト側の本丸は、あくまでも大口顧客との運賃見直しにあることは言うまでもありません。

 宅配危機、もう一つの要因として、トラックの運転手不足が追い打ちをかけます。不規則で長時間の勤務が常態化しているため、特に若い人材が集まりません。さらに、日本が誇る宅配ビジネスのほころびを端的に表し、宅配業者の負担を深刻化させているのが、全体の2割で発生する再配達問題です。宅配全体の走行距離の4分の1が再配達に充てられ、年間9万人相当の労働力が費やされていることになるといわれています。

 一方、業界の枠を超えた新しい試みも広がり始めています。ヤマトは、他の宅配業者の荷物を共同で一括配送するサービスを開始(藤沢市)。また、ヤマトとDeNAとのコラボで誕生した、AIによる自動運転技術活用の「ロボネコヤマト」の実証実験。楽天は、ドローン配送システムの2年後の実現を目指して各地の自治体と実証実験を重ねます。

 即日配送や送料無料など、日本流“おもてなし精神”に裏打ちされたサービス競争は、いつしか現場の処理能力を超え、そのシワ寄せが配送スタッフの負担増を招き、業界全体の疲弊感として表出したのが、いまの状況。
 日本の物流現場の作業員は世界一勤勉でスキルレベルも高いといわれてきました。しかし、「労働生産性」でみると、主要先進7カ国中、最下位が定位置です。ハードワークが報われない理由は明白です。それは、いかに、やらなくてもいい無駄な作業を強いられているかということに他なりません。今回、あぶり出された制度疲労ともいうべき「宅配」の歪みが、日本の物流業界全体に及ばないことを願うばかりです。

【参考】
経済産業省  http://www.meti.go.jp/
国土交通省   https://www.mlit.go.jp/
ヤマト運輸 http://www.kuronekoyamato.co.jp/
佐川急便 http://www.sagawa-exp.co.jp/
DeNA http://dena.com/
楽天 https://corp.rakuten.co.jp/
日経MJ(2017年3月10日付/同3月24日付/同4月21日付/同4月26日付)
日経産業新聞(2017年5月11日付/同5月12日付/同5月15日付/同5月16日付)  



掃除のやり方まで変えた、トイレと「クリーナー」の、二人三脚的進化。

 シートタイプをはじめ、ジェル、泡など、高機能の新商品が相次いで投入されている「トイレクリーナー」市場が、堅調な伸びを見せています。成長の背景には、トイレ(便器)自体の進化が大きく寄与していることは明らかです。
 より清潔に、より快適に、そして最大のポイントである、よりお手入れしやすいことをテーマに開発され進化してきたトイレ。その流れに足並みをそろえるかのように、トイレ掃除の方法も、掃除すべき箇所も変わってきました。便器自体の性能が、汚れが付きにくく落ちやすくなったため、こびりついた黒ズミや黄バミを力まかせにゴシゴシこすって落とすという掃除方法から、材質を傷めずに優しくサッと掃除する方法に変わってきたのです。掃除する箇所も、これまでは外から見える便器の中が中心でしたが、最近は見落としがちな便器の細部(便器と便座のすき間など)へと掃除ポイントが移り、かつ小さな汚れのうちから毎日こまめに落とすことが主流となるなど、トイレの進化がトイレの掃除スタイルまで進化させてしまったのです。

 [花王]から今春発売された「トイレクイックル ニオイ予防プラス」は、尿ハネによる嫌なニオイを防ぐため、花王独自の“ニオイプロテクト成分”を配合して菌の働きを抑制。99%除菌するとともに、拭いた後も24時間防臭効果が持続します。さらに、シートの洗浄液を増量したため、最後まで乾きにくく、1枚で便器から床まで使うことができます。
 [大王製紙]は、世界初となる、ナノ繊維“セルロースナノファイバー”をクリーナーシートに応用した「エリエール キレキラ!目に見えない汚れまで徹底トイレおそうじシートナノEX」を今春発売。髪の毛の5千~1万分の1の極細ナノ素材を配合し、商品名の通り、目に見えない細かな“ナノ汚れ”(菌、尿ハネ、ニオイ、皮脂汚れなど)まで徹底キャッチできるシートを実現。また、シートの強度を従来品の2倍に高め、より破れにくい工夫も。

 ある調査によると、「主婦が嫌いな家事」のトップが“トイレ掃除”で、主婦の4人に1人は“本当は夫にやってほしい”と思っているという結果が。また、夫婦の6組に1組が“トイレの汚れ”が原因で夫婦喧嘩をしたことがあるとのこと(大王製紙調べ)。
 トイレ掃除でクリーナーを使っているのは68%(花王調べ)。まだ多い“雑巾派”からの乗り換えを狙って市場の攻防が激しさを増すなか、家庭内トイレ掃除を巡る夫婦間バトルも激しさを増していくのでしょうか-----。



【参考】
LIXIL  http://www.lixil.co.jp/
TOTO  http://www.toto.co.jp/
花王  http://www.kao.com/
大王製紙  http://www.elleair.jp/
日経産業新聞(2017年5月25日付) 



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