毎月レポート

17.08.01

トラックからの切り替えを追い風に、帰ってきた「鉄道貨物輸送」。

  慢性的な赤字が続いていた[日本貨物鉄道(JR貨物)]が、2017年3月期決算で、1987年の国鉄分割民営化以来初めて黒字を達成しました。発足当時から、将来的には無用の存在になると目されていたことを思うと、まさに苦節30年、逆境を乗り越えての快挙といえそうです。

 背景には、貨物輸送の9割以上を担っていたトラック輸送に噴出した、ドライバー不足という構造問題があります。諸外国に比べ、一つの輸送手段に偏重し過ぎた結果、無理が生じ、一気に限界を超えてしまったのです。メーカーや流通大手は、トラック依存から脱却する手段として鉄道輸送に切り替える“モーダルシフト”へと舵を取り始めました。その機能の担い手として再び脚光を浴びる存在が「JR貨物」でした。

 道路から鉄路へ、モーダルシフトの大きなうねりは、今年に入ってからさらに加速しています。  [トヨタ自動車]は、部品を名古屋から盛岡まで輸送する貨物列車「TOYOTA LONG PASS EXPRESS」を今年から一日2往復に増便。[イオン]もメーカー各社と協力し、東京-大阪間の商品輸送に専用の貨物列車を使用。[福山通運]の「福山レールエクスプレス号」は一日3往復、東京から福岡までの主要都市間を運行しています。  しかし最も大きなエポックメーキングな出来事といえば、今年1月、ビール業界1位のアサヒと2位のキリンが、関西から北陸へJR貨物での共同配送を開始したことです。これまでは各々長距離トラックで配送していましたが、いまは平日の毎日、「スーパードライ」と「一番搾り」が仲良くコンテナ40個分に相乗りして運ばれています。これにより、年1万台相当のトラック輸送分がまかなえることに。このように、ライバル企業同士で、競うべきところでは競い合いながら、協力するところは一緒にやるという考え方は“協争”と呼ばれ、業界が抱える様々な課題を打開し、事業を維持するための効率化戦略として最近、注目されています。

 JR貨物では、貨物駅ホームの延伸・拡張、コンテナの大型化、GPSとICタグによる荷物管理など、営業力強化と効率化を旗印に社を挙げての大胆な“経営管理改革”を断行する一方、殿様商売といわれた古い体質からお客様ファーストへの転換という社員の“意識改革”を徹底。

 社会環境の変化による輸送需要の拡大を追い風に、貨物輸送の巨大市場に挑むJR貨物は、2016年に上場を果たした[JR九州]に続くことを次なる経営目標に据えています。

【参考】
日本貨物鉄道(JR貨物)  http://www.jrfreight.co.jp/
トヨタ自動車  http://toyota.jp/
イオン http://www.aeon.co.jp/
福山通運 http://corp.fukutsu.co.jp/
アサヒビール  http://www.asahibeer.co.jp/
キリンビール  http://www.bbm-japan.com/
日経産業新聞(2017年3月27日付) 日刊工業新聞(2017年4月14日付)



近ごろの訪日客のお目当ては、日本流の“KAWAII”体験。

 2016年の訪日外国人観光客数は前年比21.8%増の約2404万人、消費額は同7.8%増の約3兆7500億円で、共に過去最高を記録しました。

 最大の要団体ツアーが減る一方で、リピーターを中心とした個人訪日客が増加し、滞在中の消費スタイルも“モノ消費”から“コト消費”へとシフト。日本でしかできない“体験型消費”がトレンドとなっています。特に、訪日女性客にとっては日本の美容に対する関心は高く、“美容消費”が盛り上がりを見せています。

 これまでは化粧品購入が主でしたが、最近では美容室、エステ、ネイルなどの美容サロンやリラクゼーションサロンへの体験を希望する訪日客が増えています。その理由は、丁寧なおもてなし、レベルの高い技術力、最新のトレンド、店内の清潔感や衛生面、安心のセキュリティーなど。具体的には、ひざまづいての応待、ホットタオルを首にあててくれたりひざ掛けやクッションを用意してくれるなどの気配り、マッサージやシャンプーがとても上手でとにかく気持ちいい、寿司ネタ・歌舞伎・アニメなど日本ならではの繊細なデザインがカワイイ(ネイル)など、日本での“あたりまえ”が、外国人観光客にとっては感激のアピールポイントとなっているようです。

[H.I.S.]では、ネイルサロンや美容室で着付け&ヘアメイクが体験できるツアー「Kawaii Plan」を企画。 銀座で人気の美容室[UNIX]では、店頭に外国語表記のパンフレット等を置き、店内には中国語や英語が堪能なスタッフを配置。  東京・大阪を中心に美容サロンを展開する[フォーサイス]では、旅行会社や近隣のホテルとも連携して訪日客の取り込みに積極的。店独自のテキストを作ってスタッフの英会話研修も実践しています。

 アジア圏の20~40代女性にとって、日本は「美容に関して憧れる国」のNO.1。
 (「ホットペッパービューティーアカデミー」2015年調べ)
 なぜ、髪を切るために、ネイルをするために、エステに行くために、わざわざ日本へ? その答えはきっと、日本を訪れて身をもって体験した人にしかわからないのでしょう。  友人のお土産にはモノを買ったけど、自分へのお土産は美容体験----そんな旅慣れた訪日客を迎え入れるコンセプトは、日本ならでの“KAWAII”です。すでに訪日客から高い評価を得ている日本の“美容サービス”は、今後さらに訪日観光の目玉となる可能性を秘めています。
 


【参考】
国土交通省観光庁 http://www.mlit.go.jp/
H.I.S.   http://www.his.co.jp/
UNIX    http://www.unix.co.jp/
フォーサイス   http://forcise.info/
ホットペッパービューティーアカデミー  http://hba.beauty.hotpepper.jp/
日本政府観光局(JNTO)   http://www.jnto.go.jp/
日経MJ(2017年3月31日付)



消費者にもメーカーにも、大モテ。拡大の一途をたどる、「乳酸菌」市場。

 いま、「乳酸菌」がブームです。正確には、「乳酸菌入り食品」の市場が活発化しているということで、その勢いは発酵乳関連以外の食品にも波及しています。背景としては、整腸作用や免疫力強化といった効能が消費者の健康意識の高まりと合致する一方で、食品メーカーの研究開発の成果によって、乳酸菌そのものの使い勝手が向上したしたという側面も見逃せません。

 乳酸菌に関しては、乳業メーカーを中心に、各社、独自の乳酸菌株の研究が行われています。中でも、いま、多くの食品メーカーから熱視線を浴び、引っ張りだこになっている“スーパー乳酸菌”があります。それが、[森永乳業]が7年の歳月をかけて開発した「シールド乳酸菌M-1」です。特にウイルス感染に力を発揮し、“盾=シールド”のように外部からの敵を防御してくれるというところから名付けられました。この乳酸菌は、ヨーグルトなどに入る“生菌体”ではなく、加熱殺菌された菌です。乳酸菌は生きていないと意味がないと思われがちですが実態は異なり、菌の生死とは関係なく効能を発揮することが解明されています。むしろ、生きた乳酸菌が熱や水分に弱く、発酵が進むと風味が安定しづらくなるのに比べ、殺菌された菌なら、添加する食材の温度やペーハー値を気にすることなく均一の質で安定供給が可能となるからです。また、この菌の最大の利点は、少量(約100億個)でも十分に効能を満たす点。菌の含有量は多くなるほど酸っぱくなる傾向があり、少ないほうが味への影響が出づらいため加工食品へ応用しやすく、使い勝手がいいということになります。となれば、この菌の活躍の場は一気に広がります。

 製造元の森永乳業は、シールド乳酸菌を他の食品メーカーに販売。これほどの逸材を他の食品メーカーが放っておくはずはなく、導入企業はすでに100社を超えるほどのモテモテぶり。初めてこの菌を採用したのは[永谷園]の「1杯にシールド乳酸菌100億個みそ汁」でした(2016年)。続いて“たべるマスク”という強烈な謳い文句で登場したのが[森永製菓]の「シールド乳酸菌タブレット」。昨年9月の発売からたった1カ月で、半年分の売り上げ目標を達成しました。「おかめ納豆」でお馴染みの[タカノフーズ]からはタレにシールド乳酸菌を配合した「すごい納豆S-903」が発売。[吉野家]は今年1月、「とん汁」と「けんちん汁」にシールド乳酸菌を加えてリニューアル。[デニーズ]では昨秋より、シールド乳酸菌入りのドレッシングを全店に導入。惣菜の[RF1]は、ポテトサラダをシールド乳酸菌入りにリニューアル…などなど。 好調が続く「乳酸菌応用食品」市場。もはや、ヨーグルトだけで乳酸菌を語る時代は終わったといえそうです。

 
【参考】
森永乳業  https://www.morinagamilk.co.jp/
永谷園 http://www.nagatanien.co.jp/
森永製菓  http://www.morinaga.co.jp/
タカノフーズ  http://www.takanofoods.co.jp/
吉野家(吉野家ホールディングス) https://www.yoshinoya.com/
デニーズ(セブン&アイ・フードシステムズ) http://www.dennys.jp/
RF1(ロック・フィールド)  http://www.rf-one.com/
日経産業新聞(2017年3月6日付/同4月13日付)
日経MJ(2017年3月24日付/同3月29日付)

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