毎月レポート

17.07.01

「ロカボ」が外食にも浸透。新たな健康志向を刺激します。

 これまでの常識をくつがえす革新的な食事法として、いま注目を集めているのが、“緩やかな”糖質制限食「ロカボ」です。Low Carbohydrate(ロー・カーボハイドレート)の略で、「低炭水化物、低糖質」のこと。糖質の多い白米やパン、麺類などの主食を減らして、肉や魚、野菜などのおかずを多く食べましょうという考え方で、「食・楽・健康協会」(2013年設立)の代表であり、北里研究所病院の山田悟医師によって名付けられました。

 長年にわたり、減量といえば、脂質を筆頭にたんぱく質も糖質も摂らないことが一番という考えが世界的にもダイエッターの常識でした。ところが、米国の学会で、“低カロリー食”より“低糖質食”の方がダイエット効果が高いとする結果が2008年に発表されると、これまでの栄養学の見解が一変。低糖質食による血糖値上昇の抑制や血圧、血中脂質の改善も評価され、さらに2015年には、脂質を控えても動脈硬化症のリスクは減らないとの発表も。単なるダイエットのためではなく、健康管理の基本としてのロカボが急浮上してきました。

 糖質の量を減らしさえすれば、脂質やたんぱく質はどんどん食べていいのが「ロカボ」です。こうした動きを背景に、食品メーカーやコンビニ、外食チェーンなどは、“糖質オフ・ゼロ”のロカボ商品を相次いで投入。“脂肪分オフ・ゼロ”や“カロリーオフ・ゼロ”の市場が苦戦する一方で、その効果の高さと続けやすさが“糖質オフ・ゼロ”市場を押し上げ、年々拡大しています。
 いち早く(2012年~)低糖質商品を販売している[ローソン]では、人気の「ブランパン」シリーズやプリンなど豊富にラインアップ。[ファミリーマート]は、[ライザップ]と共同開発した、パン、デザート、カップ麺など9品目を販売。牛丼チェーンの[松屋]は、今年1月から、定食のごはんを湯豆腐に変更できるメニュー(50円高)で、糖質を94%カットしています(同店通常ライス比)。[すき家]から今春登場したのが、「ロカボ牛麺」と「ロカボ牛ビビン麺」の2種。[吉野家]は、血糖値の上昇を抑える「サラシアエキス入り牛丼の具」(通称、サラ牛)を通販限定で販売。[はなまるうどん]では、昨年、美肌効果があるとされるアスタキサンチン入り、糖質ゼロ麺の「サラダ麺」を売り出しました。世界で初めて、街ぐるみで“ロカボ活動”をしているのは神戸市の「ロカボ神戸プロジェクト」。ロカボなメニューを提供する参加店舗が拡大中です。

 40代以上の日本人で、3~4人に1人は血糖異常者、つまり糖尿病かその予備軍といわれている中、日本中にロカボが広がることで、年間1500億円もの医療費が削減できると、山田医師は予測しています。


【参考】
一般社団法人 食・楽・健康協会 http://www.shokuraku.or.jp/
ローソン http://www.lawson.co.jp/
ファミリーマート http://www.family.co.jp/
松屋フーズ https://www.matsuyafoods.co.jp/
ゼンショーホールディングス http://www.zensho.co.jp/
吉野家 https://www.yoshinoya.com/
はなまる https://www.hanamaruudon.com/
日経MJ (2017年3月6日付/同3月29日付/同3月31日付/同4月5日付)



高齢化社会を背景に、根強い人気の「訪問販売」。

 いつでも、どこからでも手軽に買い物ができるネット通販全盛のご時世に、「訪問販売」(以下、訪販)が根強い人気を保ち、健闘しています。
 ピークだった頃(1996年)と比べるとほぼ半減しているとはいえ、その売上高はテレビ通販の約3倍にも及びます(日本訪問販売協会)。ここ3~4年は、右肩上がりに伸長することはない代わりに急激に落ち込むこともなく、堅実に横ばい状態を維持。その背景には、高齢化があります。近くに店舗がない、出歩くことがむずかしい、車を持っていない、などといったいわゆる“買い物難民”をはじめ、大手スーパーなどでの買い物は味気ないし、セルフレジにうまく対応できないなどというシニアにとっては、自宅に居ながら販売員と会話しながらゆっくり買い物ができる訪販が、貴重な存在として再び見直されているのです。

 古くは“富山の薬売り”の行商がルーツの訪販ですが、その売れ筋商品の変遷が、そのまま時代の変わりようを映しているようです。
 20年前と変わらず売り上げ好調なのは、「化粧品」「健康食品」「清掃用具」。この順のままでトップ3は不動です。他に、「住宅リフォーム」「建物清掃」「下着」「衣料品」など。最近は、「電力」「飲料水」「太陽光パネル」といった商品が目立ちます。逆に、「学習教材」や「宝石・貴金属」「美容器具」「寝具」などは、近年、やや不調。

 訪販事業者は、単に商品だけではなく、様々な付加サービスを併せて売るという、“お得感販売”を打ち出しています。
 地域密着型の家電販売チェーン[コスモス・ベリーズ]は、“ずっと、あなたの電気係です”をモットーに、大型家電の設置サービスや修理などはもちろん、家電の“お困りごと解決サービス”の提供で業績を伸ばしています。
 [ダスキン]の訪販は、高齢化社会と直結した「メリーメイド事業」を展開中。シニアの“困りごと相談サービス”の提供拠点を整備しています。
 [メガネスーパー]では、眼鏡や補聴器の移動店舗型訪販に積極的。全国16カ所に拠点を設け、検査機材を積み込んだ訪販専用車両で出張訪問し(出張料金は無料)、店舗と同様の検査、微調整を行います。昨年度の訪販件数は、前年比で7倍にも増えているとのこと。

 今年6月には、「改正消費者契約法」によって規制が強化されるなど、訪販にまつわるトラブル回避のための法整備も進められています。65歳以上の人口がすでに全人口の4分の1を超えているという現状を背景に、これからの訪販はますます、家庭の玄関先という“個の販路”にとどまらず、老人ホームなどの高齢者向け集合住宅や施設が有力なお得意様となると思われます。

【参考】
公益社団法人 日本訪問販売協会 http://jdsa.or.jp/
経済産業省   http://www.meti.go.jp/
コスモス・ベリーズ http://www.berrys.co.jp/
ダスキン http://www.duskin.co.jp/
メガネスーパー https://www.meganesuper.co.jp/
日経MJ(2017年3月3日付) 



堂々と「副業」ができる時代に。欲しいのは、お金より経験や人脈。

 2016年12月、政府は「働き方改革」の一環として、正社員の副業・兼業禁止規定を廃止し、“原則禁止”から“原則容認”に方針転換すると発表しました。本業以外の仕事に手を出すなどもってのほかというこれまでの企業文化を考えれば、終業後や休日のオフタイムを活用して本業とは別の仕事に就くことに、国がお墨付きを与えて後押しするというのですから、大きな転換といえます。

 国側の思惑は、労働力不足が深刻化しつつあるいま、一人ひとりの生産性を上げるための副業推進が狙い。あくまでも、社員が副業を通じて、新しい価値観や新たな人脈、経験を獲得して本業へフィードバックすることが前提です。
 働く側としては、特にリーマンショック以降の不況で就職難を経験した世代は、倒産やリストラで職を失った場合に備え、一つの会社に依存することの怖さを肌で知っており、副業によるリスク分散の意識がより高いといえます。
 一方、企業側としては、副業容認にはまだ抵抗感があるのも事実。本業がおろそかになったり、副業をきっかけに優秀な人材が社外へ流出することや情報漏洩のリスクなどを恐れているからです。しかし最近では、副業容認という選択肢を用意することが、社員のモチベーションアップにつながったり、人材のつなぎ留めにもなるということに企業サイドも気付き始めました。
 [ロート製薬]は、昨年から副業解禁を宣言。入社3年目以上の社員を対象に「社外チャレンジワーク制度」を導入したところ、さっそく60人ほどが立候補し、小売業やNPOなどで働き始めています。
 同じく昨年、副業容認した[クラウドワークス]では、制度導入以降、新卒・既卒問わず、入社希望者が著しく増加したとのこと。
 ソフトウエア開発の[サイボウズ]は、「選択型人事制度」を設けて副業解禁に踏み切りました。一定の条件を満たせば、副業することの届け出も不要。この制度導入の効果で離職率が劇的に下がりました。

 会社勤めをしながら副業したり起業することは、欧米では当たり前のことです。本業と第二のキャリアを両立させる生き方は、“パラレルキャリア”と呼ばれ、自らのキャリアアップにつながる“転職への足がかり”と捉えています。副業で報酬を得ることが第一の目的ではなく、スキルアップや夢の実現、社会貢献などが主な活動となっています。この点が、本業への還元を第一の使命と考える日本のビジネスパーソンと異なるところかもしれません。

 動き始めたばかりの「副業解禁」ですが、副業しているのが当たり前の社会になる日は、意外に近いのかもしれません。



【参考】
厚生労働省  http://www.mhlw.go.jp/
経済産業省  http://www.meti.go.jp/
ロート製薬  http://www.rohto.co.jp/
クラウドワークス  https://crowdworks.jp/
サイボウズ  https://cybozu.co.jp/
日経MJ(2017年3月1日付)



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