毎月レポート

17.05.01

“黒子”からの脱皮。「段ボール」自身が主張し始めました。

 私たちの暮らしの様々なシーンに関わり、当たり前のように存在している「段ボール」。あまりにも“黒子”的で、ついそのありがたみを忘れてしまいそうになりますが、その段ボールにいま、成長産業としての熱い視線が注がれています。

急増するネット通販を背景に物品の輸送頻度が高まり、段ボールの需要も拡大。2017年度の国内生産量は10年ぶりに最高記録を更新する見込みです(全国段ボール工業組合連合会)。その背景には、業界を挙げての開発努力があったことは見逃せません。

水に弱く、強度も見込めないという段ボールの弱点を克服しようと、防水加工を施した「耐水・撥水段ボール」や多重構造で丈夫にした「強化段ボール」などを次々と開発。

さらには、燃えにくい防炎タイプ、特殊なインクやニスを使って害虫を寄せ付けないタイプ、サビから守るタイプ、静電気を帯電しないタイプ、果物や野菜の水分の蒸発を抑える保冷・鮮度保持タイプなどの機能性段ボールの他、テーブルやイスといった家具や避難所などでの床敷きシートやパーティション、簡易ベッドまで、段ボールの活躍の場は広がっています。

いま段ボール各社が最も注力して競い合っているのが「SRP(シェルフ・レディ・パッケージ)」という、開封や陳列の手間をいかに軽減できるかの技術。段ボール最大手の[レンゴー]は、独自に「RSDP(レンゴー・スマート・ディスプレイ・パッケージング)」と名付けた革新的な商品を開発。ミシン目を入れ、誰でも素早くワンタッチで組み立て・折りたたみを可能に。表面には商品ロゴなどがプリントされており、そのまま店頭に並べれば販促ツールに早変わりする汎用型段ボールです。“輸送箱=陳列箱”の導入によって、店頭での作業時間の大幅な削減に貢献します。

段ボール生産量の世界1位は中国、2位はこれまでトップだった米国、3位が日本です。国内の包装資材の約25%を占める段ボールの需要動向から、景気の先行きを占うことができるといわれるほど、その動きはGDP(国内総生産)とほぼ連動しています。 100%再生可能な天然素材で“リサイクルの優等生”と呼ばれている段ボール。単なる梱包資材から、新たな存在価値を求めて、段ボール自身が主張する時代が訪れたようです。


【参考】
全国段ボール工業組合連合会  http://zendanren.or.jp/
レンゴー  http://www.rengo.co.jp/
王子ホールディングス  http://www.ojiholdings.co.jp/
大王製紙  http://www.daio-paper.co.jp/
トーモク  https://www.tomoku.co.jp/
日本製紙グループ  http://www.nipponpapergroup.com/
特種東海製紙  https://www.tt-paper.co.jp/
日本経済新聞(2016年12月8日付)
日経産業新聞(2017年1月5日付)



大手と中小の格差拡大。思うように回らない「回転寿司」経営。

 低迷する外食産業の中にあって、ひとり気を吐いている勝ち組が「回転寿司」業界です。デフレを追い風にこの10年で売り上げは約1.5倍、いまや6000億円市場に成長しました。

しかし、ライバル間の競争は熾烈さを増し、年々激化。生き残りのカギは、運営母体の“体力勝負”という厳しいサバイバルの様相を呈しています。

現在の回転寿司チェーンの勢力図は、“100円寿司”の四天王、「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」の順で、売上高シェアの7割程度を占めています(店舗数では、「はま」「スシロー」「くら」「かっぱ」の順)。 業界トップに躍り出た「スシロー」の経営方針は、“原価率50%のキープ”。一般の外食業界で25~30%、回転寿司大手でも40%台が常識の中、スシローは飛びぬけて高い原価率を維持。それだけ味や鮮度にこだわり、安易に低価格競争に巻き込まれなかったことが今日の好調の勝因といえます。

斬新なサイドメニューで“脱寿司化”を加速させている「くら寿司」。 「すき家」の[ゼンショーグループ]の経営で、最後発でありながら驚異の出店ペースを見せている「はま寿司」。 一方、“100円寿司”の老舗「かっぱ寿司」。2011年に「スシロー」に抜かれるまで業界トップとして君臨していましたが、低価格で勝負し続けたことが裏目に出て経営が悪化。原価率の低さ(30%台後半)が品質低下を招き、深刻な客離れにつながりました。現在は業界4位で、2014年からは外食大手の[コロワイド]傘下で経営再建中。

もともと原価率が高く、輸入食材頼みの経営構造の下で円安が打撃となり経営をひっ迫。そこに人件費や賃料などが加わると、店の利幅は、一皿、数円程度。皮肉なことに、売りのはずだった低価格戦略が、その利益率の低さから自らの首を絞めるといったケースが数年前から見られます。

大手チェーンがサービスの充実を図って積極的に設備投資を行う一方、資金的余力のない中小チェーンは、売り上げが増えても利益が出ないという負の収益構造が恒常化。その結果、経営破綻に追い込まれ倒産に至る中小が少なからず出現しています。 いま業界は、“大手100円寿司チェーン”と“グルメ系回転寿司”の二極化が進んでいます。また近ごろは、回っているレーンからではなく、直接板前に注文して握ってもらう客が増えているといいます。
それが何を物語るのか-----100円系回転寿司の限界説もささやかれる中、この業界は今後、異業種を巻き込んでの大再編時代に突入するのかもしれません。


【参考】
日本回転寿司協会  http://www.kaiten-sushi.or.jp/
あきんどスシロー  http://www.akindo-sushiro.co.jp/
くらコーポレーション  http://www.kura-corpo.co.jp/
ゼンショーホールディングス  http://www.zensho.co.jp/
カッパ・クリエイト  http://www.kappa-create.co.jp/
コロワイド  http://www.colowide.co.jp/
日経産業新聞(2016年11月18日付)



“デジタル耳”には新鮮です。再発見、「カセットテープ」の魅力。

デジタル化が進んで音楽がデータになってしまった時代に、あの忘れられかけた存在の「カセットテープ」が、再燃の兆しを見せています。

2年ほど前から世界的にカセットテープ市場が賑わいを増し、騒々しくなってきました。 米国の老舗カセットテープメーカーの2015年の売り上げが、1969年の創業以来、最高を記録。英国では、20万本まで落ち込んだカセットテープの売り上げが、2015年には200万本まで復活。 カセットテープの生産を続ける[日立マクセル]は昨年、70年代の人気モデル「UD」シリーズの復刻版を限定発売。

2014年に渋谷にオープンした「HMV record shop」での2015年のカセットテープの売り上げは“レコードの比じゃないくらい伸びている”(店長談)とのこと。 カセットテープ専門のオンラインストア「Tape School」が開設され、[ビームス]の 音楽部門「BEAMS RECORDS」では、

2015年にカセットテープを集めた企画展を開催。 主な大手メーカーが生産から手を引く中、[ビートソニック](愛知)は2014年から車載用カセットデッキの製造・販売を復活。 [ビックカメラ]は2016年、同社オリジナルラジカセ(ラジオ付カセットレコーダー)の販売を開始。 2015年にオープンしたカセットテープ専門店「waltz(ワルツ)」(東京)には国内外の音楽テープが約5000本、カセットテープをリアルタイムで知らない10代から70代まで幅広い客層が訪れています。

カセットテープには、形のある“モノ”としての魅力があります。テープをラジカセにセットし、再生ボタンをガチャッと押すとテープが回り始めるのが見える……触れることのできないデジタル音源を相手にストリーミングするのとは対極的。この、ひと手間を要する行為がデジタルネイティブの世代には、“めんどくさいけど、カッコいい”ということに。たしかに、曲をスキップできないし、ノイズも混じっています。

繰り返し聴いているうちにテープが伸びて音が劣化してきます。しかし、そんなデメリットさえも雑味となりテープの魅力の一つに。圧縮されたデジタルの音質を聴き慣れた耳には、むしろ高音がカットされた、やわらかくまろやかな音質が心地よく感じられるのかもしれません。 デジタルへのカウンターカルチャー(対抗文化)的な側面が強い、今回のカセットテープブーム。どうやら、世の中は、デジタル化が進めば進むほど、その一方でアナログへの回帰が加速するようです。ならば、次なる復活劇の主役は、「ビデオテープ」!?

【参考】
日立マクセル  http://www.maxell.co.jp/
HMV record shop 渋谷  http://www.hmv.co.jp/
Tape School  http://tapeschool.com/
BEAMS RECORDS  http://www.beams.co.jp/
ビートソニック  http://www.beatsonic.co.jp/
ビックカメラ  http://www.biccamera.com/
ワルツ  http://waltz-store.co.jp/
経済産業省  http://www.meti.go.jp/

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