毎月レポート

17.03.01

“惜しい、さみしい”の声届かず。止まらぬ、地方百貨店の大量閉鎖。

 街の顔として市街地の中心に位置し、商店街の核となって地域経済をけん引してきた地方百貨店の閉店が、全国で後を絶ちません。

 昨年2月、[そごう・西武]が「西武春日部店」を閉店。次いで「西武八尾店」「西武筑波店」を今年2月に閉鎖すると発表。9月には、日本最北の百貨店「西武旭川店」と「そごう柏店」が閉店。さらに同じく9月、業界最大手の[三越伊勢丹ホールディングス(HD)]が「三越千葉店」と「三越多摩センター店」の閉鎖を発表(ともに今年3月閉店)。このニュースが業界内外を駆け巡るや、“あの三越伊勢丹でさえ”という空気が広まり、消費者である私たちにも改めて百貨店業界が置かれている厳しい状況を思い知らされることとなりました。一方で、これが引き金となり、各社とも、どこが口火を切るかという我慢比べをしていた状況を脱し、地方店の閉鎖に弾みがついたともいわれています。

 ピーク時(1991年)には9兆円強の売上高があった百貨店の市場規模は、2016年にはその3分の2である6兆円まで縮小。百貨店の主力アイテムである衣料品の販売低迷が最大の要因といわれています。また、2015年に沸き起こったインバウンドの“爆買い”消費も、その恩恵を受けたのは東京、大阪、福岡の3都市のみ。地方の百貨店にとっては“遠い話”でしかなく、現実は、周辺のショッピングセンターやネット通販などに客足を奪われ、さらに地域の人口減少や地方経済の疲弊、顧客の高齢化、建物の老朽化などが相まって売り上げ低迷の大苦戦を強いられることに。

 閉店連鎖の波は止まらず、阪急阪神百貨店を運営する[エイチ・ツー・オー リテイリング]が、今年7月に「堺 北花田阪急」の閉鎖を決定。[三越伊勢丹HD]はさらに、「伊勢丹松戸店」「伊勢丹府中店」「広島三越」「松山三越」の4店について、2018年度を目途に縮小もしくは閉鎖を示唆。これまで都心部の旗艦店で地方店の不振を補ってきましたが、旗艦店自体も昨春以降、インバウンドバブルが弾けて急激に業績が悪化。もはや、グループ全体で地方の赤字店舗を支えるどころではなく、都心部の店舗に経営資源を集約して収益力の回復を目指す戦略にカジを切らざるを得なくなったというのが実情です。

 商店街の中心にある百貨店がなくなると市街地の空洞化を招くとして、地元住民の抵抗が強いのはどの地方でも同じ。しかし、支えきる力を失った大手百貨店にしてみれば、背に腹は代えられないというのが苦しい胸のうちのようです。
 いまはまだ、大量閉鎖時代に突入したばかり。地方の百貨店や住民にとっては、これからも厳しい冬の時代が続きそうです。


【参考】
そごう・西武 http://www.sogo-seibu.co.jp/
三越伊勢丹ホールディングス http://www.imhds.co.jp/
エイチ・ツー・オー リテイリング https://www.h2o-retailing.co.jp/
朝日新聞(2016年10月1日付/同10月7日付/同11月9日付)
日経МJ(2016年10月7日付)



らしくない日本酒。これからの乾杯は、発泡性日本酒の「あわさけ」で。

 見た目(ボトルデザイン)にもオシャレで、口当たりのよい飲みやすい日本酒として、「スパークリング(発泡性)日本酒」の人気が高まっています。日本酒が苦手な人が感じる、鼻につく独特のニオイや重くまったりした飲み心地、高いアルコール度数といったものとは無縁。シュワシュワッ!とシャンパンのように細かな泡が立ち、フルーティーですっきり爽やか。日本酒とは思えない透明感のある味わいです。アルコール分も一般の日本酒の3分の1程度と低く、日本酒ビギナーや女性にもぴったり。

 製法は、シャンパンと同じ“瓶内二次発酵”。原酒を発酵途中のにごりを残した状態で瓶詰めして、その中でさらに発酵させ、その際に発生する炭酸ガスをそのまま封じ込めて低温で熟成させる、まさに“お米のシャンパン”です。

20年ほど前から数々の酒造会社が参入し始め、いまでは100を超える銘柄が登場しています。そんな「発泡性日本酒」の魅力を世界に広めるべく、8社の蔵元がメンバーとなり、昨秋、「awa酒(あわさけ)協会」を立ち上げました。これまで発泡性日本酒の製法や品質の基準がなかったため、厳格な基準を設けて品質を保証し、ブランディングを後押しします。“商品開発基準”として、国産米100%使用の日本酒であること、自然発酵による定められたガス圧の炭酸ガスのみを保有していること、透明で注いだ時に泡が立つことなど、全6項目に適合したものだけを「awa酒」と定義・認定し、シャンパンやスパークリングワインと肩を並べる存在になることを目指します。
 「MIZUBASHO PURE」(永井酒造/群馬)、「菊泉ひとすじ」(滝沢酒造/埼玉)、「八海山あわ」(八海醸造/新潟)など、価格帯は3000~5000円程度(720ml)。

 世界の乾杯シーンで飲まれるお酒はほとんどがスパークリングです。和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本酒にも注目が集まるなか、世界品質の「awa酒」を世界の乾杯酒ブランドに------協会では、共鳴する酒蔵をさらに増やしながら、若年層の開拓や海外進出に弾みをつけ、狙うは、来たるべき東京五輪での公式乾杯酒です。


【参考】
(一般社団法人)awa酒協会 http://www.awasake.or.jp/
日経МJ(2016年11月4日付)



新たな観光資源に育つか。インフラ構造物を鑑賞する、「土木観光」がブームに。

 10年ほど前、“工場萌え”という言葉をよく耳にしました。コンビナートや工場の夜間照明、煙突・配管・タンク群の人工的構造美を愛でる人たちの趣向を指す言葉で、写真集の出版や見学ツアーなど、デジカメの普及やネットの力もあって、工場や廃墟鑑賞の“大人の社会見学”はどんどん拡大していきました。
 そういった現象と並行し、観光業界を中心に“ニューツーリズム”という波が沸き起こりました。物見遊山的な従来の観光旅行に対し、テーマ性が強く、体験・交流型の要素を取り入れた新しいタイプの旅行を指しています。環境がテーマの“エコツーリズム”、農村に滞在して体験する“グリーンツーリズム”など。いずれも、決して万人受けするものではないだけに、興味のある一定層には強くアピールするのが特徴です。

 そして、いま。工場に端を発した巨大人工構造物を愛でる観光スタイルは、その対象物の範囲を広げ、ダム、堤防、放水路、水門、運河、発電所、橋、トンネル、港湾、道路などを訪れて鑑賞する「土木観光(インフラツーリズム)」という形となって注目を集めるようになりました。
 「土木観光」は、大きく次のようなタイプに分けられます。
(1)スケールや形、機能が優れた土木構造物を鑑賞する。
(2)施工中の土木構造物の建設工事現場を見学する。
(3)歴史的な土木構造物(土木遺産)を鑑賞する。

 昨年5月に国交省は、橋やダムなどのインフラ拠点を観光資源化する取り組みの一環としてインフラツーリズムを積極的に活用、促進していこうと「インフラツーリズム ポータルサイト」を開設。無料の見学、有料の旅行会社企画ツアーを含め、全269件(開設時点)のインフラツアー情報を紹介しています。
土木構造物への“美しさの感動”は、それ自体の造形美だけにとどまらず、その地域の風景や生活、文化、歴史などという、その構造物が作り出されるに至った時代背景の“物語”の中にこそ潜んでいるものです。

 ビジネスとして確立させるにはまず、これまでのような一部のマニアのためだけの観光資源という狭い枠からの脱却が必須となります。その地域が、誘客を前提に飲食や物販、体験プログラム、ガイドの配置といった、消費に結びつける観光コンテンツを整備して経済効果を狙うのか、あるいは単に“見せるだけ”のメモリアル的物件として保存に重きを置くのか。目的を明確にした取り組みが求められます。
 それにしても、技術者や専門家だけの特殊な分野と思われていた土木の世界に、素人である一般観光客がこれほど興味・関心を寄せるとは------こんなところにも、NHKのタモリさんの“あの番組”の影響が?


【参考】
国土交通省(総合政策局) http://www.mlit.go.jp/
JTB総合研究所 http://www.tourism.jp/
日経産業新聞(2016年10月20日付)

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