毎月レポート

16.10.01

クオリティーは熟成しても、甘くはない「日本製ワイン」の台所事情。

 「国産ワイン」と「日本ワイン」の違いがおわかりでしょうか。「国産ワイン」とは、輸入濃縮ブドウ果汁にアルコールや水を添加して日本国内で製造したワインのこと。  国内で販売されている日本製ワインの約9割弱がこのタイプです。一方、日本で栽培されたブドウだけを使って醸造された純国産ものが、「日本ワイン」と呼ばれています。

  近年、ワイン愛好家を中心に注目され、世界的なコンクールで入賞するなど国際的な評価が高まっているのがこのタイプです。しかし、毎年消費量が伸び続けているにもかかわらず、ワイン全体の国内消費量に占めるシェアはまだひとケタ台にすぎません。その理由は、肝心のブドウの供給不足にあります。農家の高齢化、後継者不足などの原因からワイン用ブドウ生産者の減少、それに伴う栽培面積の縮小(10年間で3分の1)に歯止めがかかりません。

 人気の「日本ワイン」の生産比率を増やそうとする大手ワイナリー各社は、国産ブドウの安定調達を目的に自社畑の拡大に向けて動きます。
 [メルシャン]は、甲州(山梨)、上田(長野)、塩尻(長野)などの自社管理畑を2027年までに60haに拡張予定。[サントリー]は、自社畑「登美の丘ワイナリー」(山梨)の甲州種の栽培面積を3~4年で約4倍に増やすほか、耕作放棄地の開拓を積極的に推し進める計画。[サッポロ]は、勝沼ワイナリー(山梨)の拡張を計画中。

 不思議なことに日本では、ワインの表示に関する法制度が存在しておらず、国際的に“ワイン後進国”と見なされてきました。欧米の“ワイン法”に相当する、詳細で厳格な原料産地やブドウ品種等の表示制度の整備が待たれていたところ、2015年、国税庁は国産のワイン表示に関する新たなルールを策定しました(施行は2018年から)。例えば仮に「長野ワイン」など、ラベルで地名を名乗るには、その地で収穫したブドウを85%以上使用し、その地で醸造したものでなければそこの地名入りのワインを名乗れず、「日本ワイン」と認定されないことが明文化されました。

 日本が世界的なワインの産地と認められるには、現在の10倍以上のブドウ生産量が必要だ、と提言するのは大手ワイナリーの担当者。国際競争力のあるブランドを目指す意味でも、新たなワインの表示ルールが、ブドウ不足解消の足カセにならぬことを祈るばかりです。


【参考】
日本ワイナリー協会 http://www.winery.or.jp/
メルシャン(キリン) http://www.kirin.co.jp/
サントリーワインインターナショナル http://www.suntory.co.jp/
サッポロビール http://www.sapporobeer.jp/

日経産業新聞(2016年6月7日付/同7月29日付)
日経МJ(2016年7月27日付)



鉄道会社が手掛ける農水産事業。“副業”と呼ぶには失礼なほどの実績です。

 人口減に伴う鉄道利用者の減少が見込まれる中、鉄道各社は事業の多角化の一環として農業関連事業への参入や強化の動きを活発化させています。

 早いうちから農業事業に着目し、2010年から参入したのが[JR九州]。九州各地の農業生産法人を統合して「JR九州ファーム」(佐賀)を2014年に設立。ミニトマト、甘夏、ピーマン、ブロッコリーなどを生産し、現在、九州各地8カ所に農場・養鶏場、直営青果店3店舗、スイーツショップ1店を運営するまでに発展しています。2015年の売り上げは約4億円、2019年には15億円を目指します。

 JR九州と同時期に参入したのが[JR東海]。2010年にブランド野菜の「のぞみ畑」の販売を開始。常滑と四日市に農場を所有し、トマト、レタス、イチゴ、ズッキーニなどを生産しています。

 [JR東日本]は2014年、福島県に農業法人「JRとまとランドいわきファーム」を立ち上げ、今春から8億円を投じた太陽光利用型植物工場でトマトの生産を開始。ジュース、ケチャップなどの加工食品の製造と、隣接する観光農園「ワンダーファーム」では直売所やレストランでの提供を展開しています。

 また同社は今年、新潟県・農業特区の規制緩和を活用して「JR新潟ファーム」を設立。約2haの水田で酒米「五百万石」を生産し、地元の酒造メーカーに販売しています。

 [JR西日本]は2015年から、鳥取県栽培漁業センターと組んで陸上養殖サバの卸販売事業に乗り出しました。地下50mから汲み上げた海水を使うため、“悪い虫”(寄生虫)がつきにくく臭みがない完全養殖という意味から、“鳥取生まれの箱入り娘「お嬢サバ」”と名付けられました。サバ料理専門店「SABAR(サバー)」を展開する[鯖や](大阪)と提携し、昨年から生食のブランドサバ料理を提供して話題となっています。

 [小田急電鉄]も今年、初めて農業事業に参入。グループ企業が所有する遊休地にビニールハウス4棟を建設し、高糖度のミニトマトを栽培。

 [東京メトロ]が栽培するのは、野菜ブランド「とうきょうサラダ」。東西線の高架下の植物工場(約167㎡)で、2015年からスタート。ホテルのレストランなどに販売しています。

 農水産物の生産から加工、販売までを手掛ける6次産業化を目指す“アグリ(農業=Agriculture)ビジネス”は、今や電鉄会社の経営トレンドといえるほど。沿線の人口と雇用の増加、休耕地や後継者不足の問題解消、百貨店、ホテルなど電鉄グループへの販売による収益増と、波状効果は大きな魅力。もはや、片手間の副業レベルではない、事業の柱の一つとしての本気度が伝わってきます。


【参考】
JR九州ファーム https://www.jrkf.jp/
JR東海 http://jr-central.co.jp/
JRとまとランドいわきファーム http://jrtomato.co.jp/
JR新潟ファーム http://www.jrniigata.co.jp/
JR西日本 https://www.westjr.co.jp/
鯖や http://www.torosaba.com/
小田急電鉄 http://www.odakyu.jp/
東京メトロ http://www.tokyometro.jp/
日経МJ(2016年6月1日付)



「仮想現実」が本格化。商機の拡大は、まぎれもない“現実”です。

 VR=Virtual Reality:バーチャルリアリティー。日本語訳では「仮想現実」。コンピューターによってつくり出された高解像度の3D映像やCGなどのデジタルな仮想空間を、あたかも現実の世界であるかのように、自分がその場にいるかのように知覚させる技術で、「人工現実感」などと訳されることもあります。VR専用端末であるゴーグル型のヘッドセット(ヘッドマウントディスプレー=HMD)を装着することで、360度全方向、仮想空間の世界を体験できます。今年は、このHMDが米国、台湾、韓国、日本などから次々と発売。5万円クラスの普及機種が登場したこともあり、“VR元年”として市場が一段と活気づきました。

 “体験”と“没入”がキーワードでもあるVRは、まずゲームやアトラクションの分野で活用されましたが、最近はビジネスにも広く応用され始めています。
 [三菱地所ホーム](東京)は今年から、住宅展示場でVR営業を展開。来場者はHMDをかけ、モデルハウスの室内を体感します。1カ所の展示場に来場することで、全ての展示ホーム(18カ所)の室内空間をリアルなVR画像で見ることができるとあって好評です。

 『SUUMO新築マンション 首都圏版』(リクルートホールディングス/8月2日号)には、特別付録としてHMDの「スーモスコープ」が付いています。組み立ててスマホにセットすれば、16棟のマンションのVR内覧が体験できます。
 [楽天トラベル]では、各地の観光名所をVR体験できるイベントを東京で開催。さらに、映像制作と機器貸し出しをセットにした観光PRを自治体に売り込むプランを始めました。今後、美術館や博物館なども含んだ、家に居ながらにして旅ができるバーチャルツアーコンテンツは、VR市場の大きな目玉になると思われます。

 [メルセデス・ベンツ日本]は、蔦屋書店(東京)の店舗内に、車を一切置かないショールームをオープン。VRで車の外観や内装を確認してもらうシステムで、都心で広いショールームを保持することの難しさを逆手にとったアイデアです。
 他にも、建築、教育、医療、軍事、ヘルスケア、警備、倉庫、物流、ファッションなどといった分野でもVRは急速に広がりを見せています。

 世界のVR市場規模は2020年までに7兆7000億円、2025年には約9兆円まで急成長すると見込まれています。


【参考】
メトロプロパティーズ http://www.metro-pro.co.jp/
アサヒ飲料 http://www.asahiinryo.co.jp/
スターバックスコーヒージャパン http://www.starbucks.co.jp/
日経МJ(2016年6月10日付)

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