毎月レポート

16.05.01

酒離れ世代を酔わせることができるか、「注ぐだけカクテル」。

 チンするだけのお惣菜、一回つけるだけのクリーム、スイッチを入れるだけの調理家電、聞くだけでマスターできる英会話グッズ……“〇〇するだけ”のオールインワン商品が大流行の今日この頃。もはやこの“ラクチン+ハイクオリティ”を求めるトレンドは暮らしの至るところにまで浸透し、一つの消費スタイルにまでなっているといえます。
 アルコールドリンクの世界でも、3年ほど前にアメリカから上陸した「RTS=Ready To Serve」という新しいお酒の飲み方が、徐々に日本に根付き、新たな市場を創造しつつ堅調な伸びを示しています。

 「RTS」とは、キャップを開けてそのまま氷を入れたグラスに注ぐだけで飲めるカクテル風リキュールのこと(アルコール度数10~20%)。最適な味に調整されているので、ソーダなどの割り材や果汁などを使わずに、手軽にしかも本格的な味わいのカクテルが楽しめるというメリットが。安価に抑え、若者や女性ウケする、ほんのり甘めでフルーティーな飲み心地、カラフルな色合い、オシャレなボトルデザインなどで、“酒離れ”といわれる20~30代の男女を取り込もうと、メーカー各社は商品開発や販促に力を入れます。

 中でも一歩抜きん出ているのが[サントリー]。焼酎RTSの「ふんわり鏡月シリーズ」は、アセロラ、ゆず、梅、しそレモンに今年、ライチ、ヨーグルト風味を加えて全6種に。また、果実酒RTSとしては「澄みわたるシリーズ」を展開。梅酒、葡萄酒、ゆず酒に白桃酒が加わって全4種。他にも、果実をマイナス196度で急速凍結する新技術を採用した「-196℃ロックスタイルシリーズ」には、グレープなど3種類のフレーバー。さらに今春には、宇治抹茶に玉露を加えた「抹茶プレッソ」というRTSを発売しました。

 [サッポロ]からは、梅酒RTS「ウメカクシリーズ」。ピンクグレープフルーツと白桃の2種で対抗します。[アサヒ]は、焼酎RTS「季節香るかのかシリーズ」で、“大人のカシス”と“和みのゆず”“太陽のライチ”の3種を発売中。[キリン]からは、今春「キリン杏露酒 ひんやりあんず」を発売。凍らせた国産あんずをお酒に漬け込んでできる浸漬酒を使用しています。

 本格的なお酒を好むユーザーから、若者や女性といったアルコールビギナークラスまで、幅広い層からの支持を集める「RTS」。新しい飲料文化として浸透度を増し、スピリッツ・リキュール市場の起爆剤となることに、大きな期待が寄せられています。


【参考】
サントリースピリッツ http://www.suntory.co.jp/
サッポロビール http://www.sapporobeer.jp/
アサヒビール http://www.asahibeer.co.jp/
キリンビール http://www.kirin.co.jp/
日経産業新聞(2016年1月18日付)



ドライバー確保に生き残りがかかる、「トラック運送」業界。

 “即日配送”“送料・返品無料”“時間指定配送”-----利用者が当たり前と思って、日々、享受しているサービスに、いま黄信号がともっています。急成長を続け、拡大の一途をたどるネット通販の陰で、物流の命綱ともいえる「トラック輸送」の現場で異変が起きているのです。

 それは、深刻なトラックドライバー不足です。その要因の一つには、劣悪な労働環境があります。変則的で長い労働拘束時間の割には低い賃金。身体の負担が大きい手積み・手降ろしの荷役作業。加えて、規制緩和で運送事業者数が急増。乱立した小規模業者が低い運賃で仕事を奪い合う下請け体質がまん延、そのあおりでオーバーワークは常態化し、給料が下がり続け、その結果、20代でトラックドライバーになろうという人は激減。さらに追い打ちをかけるように、2007年の道交法改正によって、これまで普通免許で最大積載量5トン未満のトラックを運転できたのが、3トン未満に変更。これにより、高卒新人の即戦力人材の獲得が難しくなり、ますます若年層のトラック業界への就業離れに拍車がかかることとなりました。

 若手の空洞化が進み、現在、ドライバーの約7割が40代以上で、高齢化は加速しています。全事業者の5割以上が従業員10人以下、6割が車両10台以下という多くの零細事業者がひしめく競争の激しい市場で、6割以上の会社が営業赤字に苦しみ、7割が慢性的な人手不足という現状。

 運送会社では、自社でドライバー育成に力を注ぐほか、一旦獲得したドライバーにそっぽを向かれないよう、積み荷を一度に運べるカーゴ式に切り替えたり、スワップボディ車(車両本体と荷台が脱着可)を導入したり、ドライバーの嫌がる作業を軽減して“現場”をカイゼン。
 国も、「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」(2016年)を公表して、ドライバー不足が社会的インフラの足かせとなることへの危機感を募らせ、3Kといわれるネガティブイメージからの脱却を図るべく抜本的な対策を急いでいます。

 日本の消費経済の根幹を陰から支えるトラック物流の危機、ドライバー不足。日本だけでなく、欧米各国でも深刻化している“社会問題”です。そしてそれが、単純な少子高齢化が原因でないことが判明したいま。私たちの普段の便利な暮らしが、厳しい環境下のトラック物流で下支えされているということを、改めて痛感せずにはいられません。


【参考】
全日本トラック協会 http://www.jta.or.jp/
国土交通省 https://www.mlit.go.jp/
日経МJ(2015年12月11日付/2016年2月12日付/同2月26日付/同3月4日付)



企業努力が心に響きます。安全・安心+おいしい、「アレルギー対応食品」。

 特定の食べ物を口にすることで多様な症状が現れる「食物アレルギー」は、年齢性別に関係なくかかり得る疾患です。発症は、0歳から乳幼児期がピーク。文科省の調査によると(2013年度)、小中高生の4.5%が罹患(りかん)しているとの結果があり、40人学級なら1クラスに1~2人が「食物アレルギー」を持っている計算となります。国は2001年から、鶏卵・乳製品・小麦の3大主要原因食品に、エビ・カニ・そば・落花生を加えた7品目を「特定原材料」に指定し、加工食品への表示を義務付けています。

 患者本人と保護者の負担を少しでも軽減しようと、食品メーカーや外食チェーンは対応に取り組んでいます。

 早くからアレルギーケアに着目し、食物アレルギー対応ブランド「みんなの食卓シリーズ」を展開する[日本ハム]は、2007年、酒田市(山形)に専用工場を設立。アレルゲン物質の混入を検出するため、自ら検査キットも開発しました。

 “家族みんなと同じメニューを子どもにも食べさせてあげたい”と願うアレルギーの子を持つ親たちの切実な声に応え、2年がかりで開発されたのが「キューピー エッグケア(卵不使用)」。卵のおいしさとマヨネーズのような食感とコクを,卵を使わずに実現しました。

 これまでレトルトが主流で、かつ乳幼児向けの味つけが多かったアレルギー対応のカレーやシチューを、通常のものと遜色ない味にしたのは[ハウス食品]の「特定原材料7品目不使用シリーズ」。アレルゲンシャットアウトの専用製造ラインを整備し、500回を超える試作の末、誕生しました。
 [エスビー食品]も昨春、「アレルゲンフリー(27品目不使用)」の業務向けカレー&シチューフレークを発売。特定原材料7品目に準じて表示が推奨されている、20品目の原材料についても不使用の商品です。

 一方で、ファミレスやファストフードなどの外食業界では、食物アレルギーに関する制度やガイドラインといったものはなく、自主的な取り組みに委ねられているというのが現状です。例えば[デニーズ]では、対応メニューの提供や専用の調理器具・容器の使用はもちろん、アレルゲン物質の混入を現場でチェック。配膳するのも専任のスタッフが行うという徹底ぶり。

 ネット通販や専門店といった限られた販路だけでなく、スーパーなどでも目にすることが増えてきた「アレルギー対応食品」ですが、食品メーカーにとっては、アレルゲン物質混入防止のための新たな設備投資や万全の体制づくりなど、クリアすべき要件も多く、当然、製造コストは上がり、価格への上乗せは避けられません。

 しかし、採算は厳しくとも、絶対になくてはならない商品が「アレルギー対応食品」です。患者目線のきめ細やかな努力が、顧客満足度を向上させ、保護者の心にも響き、ひいては企業のCSR(社会的責任)実現につながると思われます。


【参考】
文部科学省 http://www.mext.go.jp/
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
日本ハム http://www.nipponham.co.jp/
キューピー http://www.kewpie.co.jp/
ハウス食品 http://housefoods.jp/
エスビー食品 https://www.sbfoods.co.jp/
デニーズ http://www.dennys.jp/
日経МJ(2016年2月12日付)

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